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松岡美術館:「好き」でいっぱいの美術館(藤澤まりの)

 ああ、この人とは趣味が合うだろうな。足を進めるたびにそう思った。

キャプションに「(創立者・松岡清次郎は)大ぶりで力強いものを好んだ」とあったように、展示されている作品はどれも迫力があるものばかりだ。色使いもカラフルで鮮やか、見るからに華やかなものが多かった。


 私もどちらかというと、わかりやすく目を引く芸術作品が好きである。先日、太田記念美術館「赤色が語る浮世絵の歴史」で、「赤絵」という明治時代に流行した浮世絵を知った。赤絵は当時の最先端である外国産の顔料を使った鮮やかな赤をとにかく沢山使った作品群で、芸術的な評価はあまり高くないそうだ。しかし私は、その目を見張るような色遣いの華やかさが好きである。目利きの松岡氏が芸術界で評価の高くない作品を好むかは怪しいところだが、私の趣味嗜好と少し重なるところがあるのではないかと、勝手ながら共感してしまった。


 松岡氏が午年生まれだからという理由で集めていたという馬の置物たちや、年を取ったら茶を嗜もうと考え集めていた茶器たち(実際には高齢になってもオークション等で世界中を飛び回っていたそうだ)など、展示品から松岡氏の人となりや人生まで覗いている気分であった。これは蒐集家のコレクションを展示する私立美術館ならではの魅力だと思う。


 また、この美術館は世界史の教科書を立体化したかのようだとも思った。高校生の頃から世界史が大好きな私にはワクワクが止まらない空間である。古代ギリシア・ローマの彫刻、景徳鎮の壺や皿、ガンダーラ美術の大仏にヒンドゥーの神々の像、クメール彫刻、ペルシャの影響を受けた中国の置物、グレコのブロンズ像……。あらゆる時代、あらゆる地域を旅しているようであった。


 私は学芸員養成課程・教職課程の授業で、博物館や美術館と学校教育との連携について学んだ。もしも私が高校世界史の先生だったら、生徒達にこの美術館に行くことを勧めたい。多くの生徒が呪文のように暗記するだけで終わってしまうであろう文化史の登場作品たちが、本当はとてつもない迫力を持った実在のものであることを体感してもらいたい。


 今回初めて訪れたが、こんなにもどこを見ても楽しくてたまらない美術館はそうそうない。これからも何度もここを訪れよう、と心に決めつつ、高級ホテルのような美しい建物をあとにした。

 

会場・会期

松岡美術館「再会記念展 松岡コレクションの真髄

2022年1月26日から4月17日

 

・執筆者プロフィール

藤澤まりの

都立大で社会人類学を専攻し、同時に学芸員養成課程・教職課程を履修しています。

これまでは地方に住んでいたこともあり大規模な企画展のみ見ることが多かったのですが、これからは「これぽーと」をきっかけに多くの常設展を見に行きたいと思っています。