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第1回:レビューの使い方会議(仮)(南島興)


これぽーとを主宰している南島です。


 突然ですが、前から少し疑問だったことがあります。毎月のように展覧会が開かれて、それに対するレビューがさまざまなメディアで公開されている。けれど、展覧会が終わったあとのレビューや、一度読まれた後のレビューはどこへと行ってしまうのか。書籍であれば、何度も読み直されることや本棚にしまっておいて、その時々で読み返されるということがありますが、展覧会のレビューで、それもネット公開のものは、なかなかそうはなりにくいと思います。どうしても一回の使い切り感が否めません。


 これはもったいないことだなと前から思っていました。本来、レビューは展覧会が終わったあとやその展覧会の存在すらも忘れられたあとにこそ、それがどんな展覧会であったのかを記録した資料として重要な意味を帯びてくるはずだからです。


 こういった問題意識から、これぽーとでは断続的に、南島がこれまで公開されたレビューを僕なりに紹介していくことにしました。題して「レビューの使い方会議(仮)」。試しにではありますが、この場でレビューの「使い方」をいろいろ見つけ出していきます。レビューを書いていただいたみなさんのためにも、読んでいただける方々のためにも、主宰者である自分には、それを発見していく責務があると思っています。

 第一回目となる今回は、2020年8月末に公開された群馬県立近代美術館と京都市京セラ美術館のレビュー記事をご紹介いたします。

群馬県立近代美術館:境界線をまたぐ(本橋奈々実)

 「企画展かと思ったら、常設展だった。常設展かと思ったら、企画展だった。そんな勘違いはよくあることだろうか?」という興味深い問題提起から始まる、本橋さんのレビューはコレクション展と企画展の境界線をまたぐ、一鑑賞者の実感をもとにして書かれています。私自身もこれぽーとで扱われるさまざま美術館や展覧会について考えるたびに、企画展と常設展の区別自体が美術館関係者にとってだけ重要な意味をもっているのではないかと思うようになりました。ほかにも、企画展であっても自館の所蔵品を豊富に使ったものは、これぽーとの理念からして本来扱うべきであるが、常設展やコレクション展としては銘打たれていないために取り上げるのに躊躇いが生じたりしました。そのなかで、美術館側が想定している種々の展覧会の区別そのものがまずは問われるべき前提であると気づきました。本橋さんは、そうした躊躇いや迷いのようなものに対して、企画展と常設展の作品を比較検討することで、ポジティブな意味を見出しています。このレビューをもとにして、今度は企画展と常設展と言われている、その展覧会はどれほどあえて区別するべきものなのか、そのあたりについて考えてみたいです。つまり、「またぐ」というとき、それはいったい何と何の間をまたいだことになるのだろうか?と。


京都市京セラ美術館:私たちは常設展へ何を見に来ているのか?一鑑賞者の観察記録(クニモチユリ)

 常設展に見に来ている鑑賞者の鑑賞スタイルを記録するという変わったスタイルのレビューで、「見ることについて考える」メタ的なレビューになっています。いや、もっと言えば、作品を見ている鑑賞者を見ているという意味で、クニモチさんというもう一人の鑑賞者の記録とも言うことができます。ただ、ここで記録された鑑賞スタイルがすべて作品をよく見るために取られているわけでは、きっとないことも考慮する必要があるでしょう。個人的な感覚としては、だいたい他の鑑賞者のいる展示空間や、あるいはギャラリーなどで作家本人がいる会場で、恥ずかしながら、ステイトメントやキャプションをまともに集中して読めたためしがありません。正直にいえば、半分ぐらいは読んだ振りをしています。作品鑑賞においても、一応ちゃんと見ている振りをしないと失礼なのではないか、という無用の配慮をしがちです。そんな人は少なくないのではないでしょうか。作品をよく見るということとちゃんと見ている振りをすることは、外目からは区別しがたいですが、本人からすれば、それなりにわかりやすく区別がつくものだと思います。だとすると、クニモチさんが記録したいくつかのスタイルは、作品をよく見ようとする鑑賞者の率直な興味関心と、それと同じぐらい美術館の鑑賞はかくあるべきという、暗黙の規範に従う心持ちの合わさったものとして理解するべきではないでしょうか。美術館の空間は、どんな鑑賞スタイルを鑑賞者に強いて?いるのか。鑑賞の自由さと不自由さについて考えられるレビューになっています。

不定期ではありますが、次回以降、公開日の古い順にレビューのご紹介していきます。次週は、展覧会レビューに戻りまして、ゲスト寄稿の方に執筆していただいた兵庫県立美術館のコレクション展のレビューが公開される予定です。お楽しみに!